おりものに膿が混じっている、おりものの中に泡が混じっている、膣が熱くて痛い、おりものの臭いが急にきつくなってきたなど、膣内や外陰部を中心とした症状が見られたときに、カンジダ膣炎と並んで疑われるのが、「トリコモナス膣炎」です。
ゾウリムシやミドリムシなどと同じ原虫の仲間に分類されるトリコモナス(大きさは0.1ミリ程度)は、女性の膣内(子宮頸管)や膀胱、男性の尿道に潜んでおり、主にセックスを通じてパートナーに感染します。頻度は稀ですが、温泉やトイレの便座から感染する例も少ないながら報告されています。
トリコモナスに感染してから1~2週間ほど経つと、おりものに異常が見られるようになります。具体的には、黄色やクリーム色のおりものの中に膿のようなものが混じっていたり、鼻をつくようなツーンとしたにおい、おりものに泡が混じるなどです。子宮や卵管に影響はありませんが、尿路に感染すると頻尿や排尿痛などの症状がでることもあります。
性病の多くは痛みとかゆみを伴いますが、トリコモナス膣炎は、膣の中が熱感を伴ってかゆみが現れたり、外陰部が赤くただれてしまい、シカシカと痛みを感じるのが特徴です。トリコモナスの感染は、婦人科でおりものを採取して顕微鏡で拡大して原虫の有無を確認したり、培養試験で簡単に確認できます。
トリコモナス膣炎は、膣内を洗浄してから抗トリコモナス薬のメトロニダゾール(製品名:フラジール腟錠250mg)を膣内に挿入します。外陰部にかゆみがある場合は軟膏も処方されます。通常はこの治療で10日間もすれば完治しますが、原虫が完全に消滅したかを確認するために婦人科でもう一度検査を受けます。
性病の病原菌以外による膣炎は免疫力の低下がきっかけに
クラミジアや淋菌、トリコモナス、カンジダなどの性病の病原菌以外の、一般的な雑菌(大腸菌、ブドウ球菌、連鎖球菌など)による膣の炎症のことを「膣炎(非特異性膣炎)」といいます。通常、これらの菌は健康な女性の体にも多く生息しており悪さはしないのですが、なんらかのきっかけで膣内に侵入・繁殖すると、膣のかゆみ・痛み・腫れ、黄色いおりもの、血が混じった茶褐色のおりものがでるなどの症状があらわれます。
膣は体内と体外を繋ぐ重要な器官ですので、雑菌が侵入しないように酸性に保たれています。これを膣の自浄作用といいます。膣の自浄作用は女性ホルモンであるエストロゲンによって保たれているのですが、生理不順や精神的なストレス、過労などの要因でホルモンの分泌が乱れると、十分な自浄作用が期待できなくなります。
その結果、普段悪さをしない雑菌がこのスキを狙って、膣内に侵入・繁殖して不快な症状を引き起こすのです。また膣の入り口は尿道や肛門に近い距離にあるため、構造的に雑菌が侵入しやすい環境にあります。またセックスによる刺激、ビデによる過剰な膣内の洗浄、タンポンの置き忘れなども雑菌が繁殖する原因となります。
膣のかゆみ、痛み、おりものの異常といった症状は、カンジダやトリコモナスなどの性病の病原菌でも同じように引き起こされるため、婦人科を受診しておりものを採取するなどの検査をしないと判別ができません。膣炎を放置していると、患部の潰瘍(ただれ)ががんに進行する可能性も否定できませんので、細菌性の膣炎でもしっかり治療することが大切です。
婦人科における膣炎の治療は、まず膣内をキレイに洗浄します。また炎症を抑えるための抗生物質の飲み薬が処方されます。あわせて、膣内に挿入する膣剤や軟膏を使用することもあります。雑菌は湿った場所を好むので、通気性の悪い下着、ジーンズなども膣炎を発症させる原因となります。蒸れやすい夏場は風通しのよい服装を心掛けましょう。